小泉清子

清子の思ひで

第十二話 三日後に入省せよ

三日後に入省せよ

長い長い恥ずかしい午前中は終わった。十二時になると途端に女子社員はサッサと食堂へ行った。誰ひとり、声をかけてくれる人はいなかった。新米の私は、仕事は満足にできず、その遠慮もあって大分あとから食堂に向かった。ご飯の入った大きなおはちが大食堂に幾つもおいてあり、各自が茶碗によそい入れるのだ。馴れない手つきで茶わんに入れようとおしゃもじを持ったら、何と、ご飯はすっかりなくなっている。鉢のふちについた十粒ほどのご飯を一生懸命かき集めて食べた。誰も振り向きもしない。みんなは楽しそうに食事を終え、お茶を飲んでいる。職業戦線に入った第一日、女学生気分のぬけぬまま、夢を託して職場に入った私はなんともわびしい、きびしい世の中を肌で感じた。自分が惨めに思えた。だが、ここで自分に負けてはいけない。まだこれからではないか、と言いきかせた。

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バックナンバー

  • 第一話 昭和二十二年九月二十八日、大安の日、「鈴乃屋」は誕生した。
  • 第二話 紅絹に感ずる女の業
  • 第三話 震災のあとの七五三
  • 第四話 小学生の頃
  • 第五話 馬とび
  • 第六話 麦ご飯のお弁当
  • 第七話 母
  • 第八話 二足のわらじ
  • 第九話 女史になれ
  • 第十話 コンデェイションとコンディション
  • 第十一話 不合格

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