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小泉清子

清子の思ひで

第二話 紅絹に感ずる女の業

満腹の後、“焼け出され”の私たちは、祖父の家へ引き取られていくことになった。再び大八車に、母や私たちの着物の入った箪笥などの家財道具を積み、丁稚たちの引くその荷車を先頭にして上野の山を下りた。

根岸の電車通りを、真っ直ぐに千住へ向かった。一、二百メートルおきに、真っ黒に焦げた無惨な電車の姿があった。「チンチン電車も、こんなに焼けてしまった」と、私は初めて心細さに襲われた。お腹の大き母は、右手に妹をとり、左手に私をとっていた。姉はその後ろから、これも押しだまったついてくる。

やがて、空がどんよりしてきたと思うと、たちまち篠つく雨となった。着ていた浴衣がぐしょぬれになり、脚にまとわりついて、何とも歩きにくかったことを、今もはっきり覚えている。

早く、おばあちゃんが待っていてくれるという、おじいちゃんの家にたどり着きたかった。私達ばかりでなしに、前も後も同じように、体中濡れた人々が口をきく元気もなく歩いていた。
大雨の中を、何時間歩き続けたことか、ようやく祖父の家に到着したときには、もう日はとっぷり暮れていた。母は、私達の無事に安堵し、涙を流して迎えてくれた。母も目に涙をためて、「どうぞ宜敷くお願いします」ときちんと手をついて、しばらく顔も上げなかった。

丁稚たちが、大八車の荷物を下ろし始めた。雨にぬれて箪笥が一層重くなったのか、それとも私たち同様、祖父の家にたどり着いて、今までの疲れがどっと出たせいか、家の中に運び込む足どりが大儀そうであった。

とっさに、母は何を思いついたのか、急いで箪笥に駆け寄ると、すごい勢いで引き出しをあけた。母の口から「あっ!」という声がもれ、血相が変わった。

私は、ただならぬ母の様子に驚き、慌ててそばへ寄った。見ると、胴裏の紅絹(もみ)の色が雨にぬれて、全部表地にしみ出しているのだった。まるで血がにじみ出たようである。

私の、三歳のお宮参りの折の別染の友禅も赤くにじみ出て、無惨な姿をさらしていた。母は、今こそ精も根も尽き果てたもののように、くず折れてしまった。

そういえば、雨の中を歩きながら箪笥の覆いを気にして、何度も何度も直していた母である。こんなにみじめな結果を招こうとは、全く信じられなかったに違いない。私は母の落胆に、幼心にも胸を刺されるような痛みを感じた。

以来私は、今でも妖しく赤い紅絹に触れるとこの痛恨事を思い出し、不思議な女の業を感じるのである。

あの頃の日本は?

文部省臨時国語調査会が「常用漢字」を発表。ヒット曲は、「春よ来い」。アメリカではウォルト・ディズニー・カンパニーが発足されました。

  • 第一話 昭和二十二年九月二十八日、大安の日、「鈴乃屋」は誕生した。
  • 第二話 紅絹に感ずる女の業
  • 第三話 震災のあとの七五三
  • 第四話 小学生の頃
  • 第五話 馬とび
  • 第六話 麦ご飯のお弁当
  • 第七話 母
  • 第八話 二足のわらじ
  • 第九話 女史になれ
  • 第十話 コンデェイションとコンディション
  • 第十一話 不合格

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