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小泉清子

清子の思ひで

第六話 麦ご飯のお弁当

しかし、時代は昭和に移り、昭和二年の金融恐慌を発端に、景気の悪化は甚だしく、外交、軍事、経済の全てが狂い出していった。昭和五年初頭、金解禁を実施した浜口緊縮内閣は経済の破綻につながり、この年の終わり浜口雄幸首相は右翼に狙撃され重傷を負った。昭和六年は満州事変の勃発、七年の五・一五事件によって犬養毅首相は暗殺とテロ事件が続いた。昭和初年ごろの不況のしわ寄せは、中小企業、農村恐慌と弱いところに押し寄せ平穏無事だったわが店を侵略しはじめる。とくに繊維業界は大影響を受けたのである。

ミシン革命がはじまっていて、孔かがりミシンをいち早く導入、効率が上がりはじめて喜んでいた父の顔が、日に日に暗くなっていくのを、人一倍感じやすい私は、姉妹の誰より早く気づいた。姉と弟は、その頃から風邪がこじれて肋膜炎となり、やがては初期の肺結核にと移行する。病身の姉に相談することもできない。帳場の売上伝票の厚みが、だんだん減っていく。

昭和六年春、念願の東京府立第一高女入学時の喜びの父のあの明るさは、どこにも見出せなかった。子どもたちには知らせたくない一心で、努めて笑顔で平静をよそおっていた父は、ときどき食事にも、ひいきの料亭へいつもと変わらず連れていった。

私は或る日、思い切って父に、「お父さん、この位の売上げでやっていかれる」とたずねた。「ああ、大丈夫なんだよ。うちはよそとちがって、製造して販売するんだし、この品物はどこにもないので利益が大きいから、心配することはないよ」と、父はやさしく説明した。しかし、私は小遣いをだんだん減らしていった。わが家ではお小遣いは口頭でなく、各自が伝票によって自由に引き出せる仕組みになっていた。一円、と書こうと思っても、五十銭にしてしまう。ずいぶん神経質な少女であった。

母の台所も、少しずつ節約の方向をたどり出した。白いご飯が麦ご飯になった。母はさり気なく「麦ご飯は体のためにいいからね」。女学校で開く昼のお弁当も、周囲の友だちは皆真白なご飯がたっぷり。蓋をそっと載せてかくすように早く済ませることが多くなった。月の内、一日、十五日は銀ご飯である。そのときだけは、はればれとお弁当のフタをあけて食べた。その恥しさも母には告げない勝気な女学生だった。

わが家を襲った不況、困苦の時代は、私が嫁入りするまで続いたのだった。

あの頃の日本は?

東洋初の地下鉄が、上野-浅草間に開通(2.2キロ)。
「モガ」「モボ」─ モダンガール、モダンボーイの略。西洋文化や新しい風俗、流行に影響を受けた若者が街を闊歩しました。

  • 第一話 昭和二十二年九月二十八日、大安の日、「鈴乃屋」は誕生した。
  • 第二話 紅絹に感ずる女の業
  • 第三話 震災のあとの七五三
  • 第四話 小学生の頃
  • 第五話 馬とび
  • 第六話 麦ご飯のお弁当
  • 第七話 母
  • 第八話 二足のわらじ
  • 第九話 女史になれ
  • 第十話 コンデェイションとコンディション
  • 第十一話 不合格

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