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小泉清子

清子の思ひで

第九話 女史になれ

女史になれ小さく弱い経済界は、それだけ大きい犠牲を払わされた。明日のお米もなくて、肌をもぎとられるような辛さに耐えながら、着物を抱えて質屋ののれんをくぐる女性たちがどれほどあったか。そんな話を時々母から聞かされる。「人間は上を見たらきりがない。下を見ることよ」下をみるからまだ私のところは有難いのだと、母は自分自身を励ましている風だった。そう思わざるを得ないのだろう。世の中は暗い事件ばかり。商売は日に月に、下降線をたどっているようだった。

「あなたのお店は立派ね。千住から御徒町まで、市電の中から毎日見てるんだけど、一番すばらしいわ」学校で友達にいわれたとき、恥しかった。表向きは立派だけど、中身は苦しいらしいのよ、とはとてもいえない辛さであった。

馴れない職業にこりた父は、現状維持では到底切りぬけようのない経済状態をどうするか、深い悩みを抱えている様子が私にもひしひしと伝わった。姉と弟と三人だけになって、こうしてはいられない責任感と、焦燥感を抱いていたのは確かだ。蝶よ花よと、生まれてから小学校卒業ぐらいまでは何不自由なく、別染、友禅、舶来洋服地の注文服と、華やかに着飾り、周囲の羨望を浴びていた。女学校へ行き始めたころから、神経過敏な、繊細な、質素な、そうした娘心に移行していっった私を、父は素早く察知して、時には明るく冗談をいって笑わせた。

「お前は将来女子大を出て、世界中を歩いて立派な女史になるんだ」「何の女史になるの」。「何でもいいんだ。女史になるなら」おかしくなった。

「私は学校の先生になりたいの」。「学校の先生か」。父はがっかりしたのか、現実的な答えに夢をこわされたのか、冗談のなかに、夢と期待と現実が交差しながらも、あながち夢想といえない真実も読みとって、私は父がかわいそうになった。現実の苦しさをおおう術もなく、とにかく打開策を打ち出すよう前進しなくてはならない。愛する子どものため、店員のため、日夜の苦悩がまた、私の小さな胸に以心伝心する・・・・・。

父の思い余った打開策、妙案は、乳バンド(ブラジャー)の制作、すばらしいアイデアであった。綿を使う、ミシンを使う。作業は現業の範囲でできる仕事だ。母もこれに賛成した。

  • 第一話 昭和二十二年九月二十八日、大安の日、「鈴乃屋」は誕生した。
  • 第二話 紅絹に感ずる女の業
  • 第三話 震災のあとの七五三
  • 第四話 小学生の頃
  • 第五話 馬とび
  • 第六話 麦ご飯のお弁当
  • 第七話 母
  • 第八話 二足のわらじ
  • 第九話 女史になれ
  • 第十話 コンデェイションとコンディション
  • 第十一話 不合格

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