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小泉清子

清子の思ひで

昭和二十二年九月二十八日、大安の日、「鈴乃屋」は誕生した。

平和は取り戻したが家はできない。衣服もない。こんな時にできる仕事は、「そうだ家を作ることはできないが、衣裳を作ることなら私に出来るかもしれない。戦前のあの美しい着物姿をもう一度見られるようにしなくては。昨日、母が勧めてくれた呉服屋、私が偏見をもっていた呉服屋ではなく、女性の美しさを引き立てる新しい呉服屋を。この廃墟を着物姿でうるおわせるなら・・・・・」、私の若い血は燃えたち、息をはずませながら家路まで走り出した。
「お母さんが勧めてくれた呉服屋をやる決心をしたわ」
「お父さん、できるだけ早く、小さな土地を探して」
「お金がないから、しばらく貸して下さい」
突然に走って帰ってきた娘が口走る言葉にびっくりしながら、
「ようし、お前は戦後、俺の片腕になって働いてくれたから、その褒美に良い場所を探してやろう」
気早な父は、もう外へ出ていた。一週間もしない内に、
「松坂屋の前の風月堂の跡だ。十五坪だけど意外に安かったから決めてきた」
「そんな良い場所でなくていいのよ」、私は父に遠慮して言った。
「なあに、お前から預かった金もあるからなあ」

終戦直後、単身で上京した父に、僅かだけど私の全財産を無理に預けたことを気にしていたのだった。

父の即決と、母の強い一言によって、松坂屋の前に、十五坪で二階建の、小さいながら当時としてはかなり立派な店が出来上がった。私は嬉しかった。両親のお陰と深く感謝した。

昭和二十二年九月二十八日、大安の日、「鈴乃屋」は誕生した。

開店の朝は待ち切れずに、六時に店を開いた。東の空は澄みわたり、私だけを祝福してくれるような気がした。たったひとりの女店員の初ちゃんは、まだ中学出たての十六歳、私の指示通りに小まめに掃除をし、道路に水を打ってくれる。ウィンドウには、昨夜陳列した染め見本が五本、色とりどりに素晴らしく美しくみえた。この五本の染め見本が、総資本であった。

他人の目からは、あとにも先にもたった五本の染見本だが、私にとっては身を切るような貴重なものである。店のメドは立ったが、資本のあろう筈がない。私は疎開先から返ってきた自分の着物をすべて手離して資本にしたのだった。「高価買入」の看板のある古着屋に隠れるようにして入り、お金に代えた。好きな着物が、一枚一枚はがされるような痛みを感じた。

着物屋を開くために、自分の着物を売って資本を作る。女心の辛さは、生き抜くためにのり越えなければならないのだった。

衣料統制下で、新しい反物販売は禁制であった。やむを得ず、きもの染め替え業を始めたのである。

あの頃の日本は?

昭和22年は日本国憲法施行、最高裁判所発足など、戦後の日本が新たな歩みを始めた年でした。鈴乃屋の誕生も、時代の新たな息吹のひとつだったかもしれません。

  • 第一話 昭和二十二年九月二十八日、大安の日、「鈴乃屋」は誕生した。
  • 第二話 紅絹に感ずる女の業
  • 第三話 震災のあとの七五三
  • 第四話 小学生の頃
  • 第五話 馬とび
  • 第六話 麦ご飯のお弁当
  • 第七話 母
  • 第八話 二足のわらじ
  • 第九話 女史になれ
  • 第十話 コンデェイションとコンディション
  • 第十一話 不合格

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