清子の思ひで

長い長い恥ずかしい午前中は終わった。十二時になると途端に女子社員はサッサと食堂へ行った。誰ひとり、声をかけてくれる人はいなかった。新米の私は、仕事は満足にできず、その遠慮もあって大分あとから食堂に向かった。ご飯の入った大きなおはちが大食堂に幾つもおいてあり、各自が茶碗によそい入れるのだ。馴れない手つきで茶わんに入れようとおしゃもじを持ったら、何と、ご飯はすっかりなくなっている。鉢のふちについた十粒ほどのご飯を一生懸命かき集めて食べた。誰も振り向きもしない。みんなは楽しそうに食事を終え、お茶を飲んでいる。職業戦線に入った第一日、女学生気分のぬけぬまま、夢を託して職場に入った私はなんともわびしい、きびしい世の中を肌で感じた。自分が惨めに思えた。だが、ここで自分に負けてはいけない。まだこれからではないか、と言いきかせた。